世間一般はGWである。
だが、俺は相変わらずこいつと顔を付き合わせていた。もっとも、俺たちの仕事にGWなんて関係ないようなものではある。
「で? 今回の仕事の内容は?」
どうせ仕事の話だろう。こいつと、うだうだ話をしても仕方がない。
俺は目の前に座るや否や、開口一番、話を切り出した。
「いきなりだな。だが、今日は仕事の話じゃない」
「……? お前が、仕事以外で呼ぶなんて珍しいな」
じゃあ、何の話なんだ?
聞き返そうとすると、こいつは急に花束を差し出してきた。
花束は俺から見えない位置に置いてあったらしい。
「何だ、これは!?」
「何って、花だが?」
俺が聞きたいのは、そういうことじゃない。問題は、なぜここで花束が出るのかということだ。
って、何だか前にもこういうやり取りをしたことがある気がするな……。
「菖蒲の花だ。お前のために用意した」
アヤメかよ。花束にしたのを初めて見たよ。花言葉は『憤慨』だっけ? どこかでそう聞いた気がするんだが……。
まさか、前回に対する当て付けか?
「何を言っている。俺がわざわざそんなことをすると思うか?」
確かに、お前はそういうヤツじゃないな。
「で、こいつを俺に渡してどうする気だ? 前にも言ったように、こんなのを貰っても嬉しくないぞ」
俺もお前も男だからな。たとえ、俺が特殊だとしても。
それと、そういう顔と態度は、世の女にくれてやれ。付いてくるヤツがダース単位でいるぞ。
「それは残念だ。ところでお前は子供は好きか?」
相変わらず話の切り替わりが唐突だな、おい。
だが、まぁ子供は嫌いじゃない。近所の子供の面倒を見たこともあるしな。
もっとも、俺が親になったら、子供に甘くなりそうだはと思う。
「そうか。いずれは子供も欲しいものだな」
そうだな。だが俺は、お前からそういう話題が出ること自体が驚きだ。
などと、今日は取り留めのない話に終始したのだった。
しかし、GWにこんな話をするなんて、五月病になったわけでもあるまいに、どうしたのだろうか?
ところで、貰ったアヤメの花言葉が一般に『恋のメッセージ』『愛』などだ、という事実はあとで知った。
が、知らなかったことにしよう。そう、俺は何も知らないからな。
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