2008年6月19日木曜日

現代小説『とある朝の会話』(実験作)

「先輩、今回の人はどうでした?」
「準備も動きも良かった。あとは経験次第だな」
「なら大丈夫ですね。それに格好もよかったですし……。あれ、変な顔をしてどうしたんですか?」
「何でもない」
「あ、大丈夫ですよ。あたしは先輩一筋ですから」
「そういうことじゃない」
「そうですか?」
「よ。お二人さん」
「あ、野村先輩おはようございます」
「おはよう。野村……と佐藤さん」
「佐藤? って香織、いつ来たんだ?」
「今来たとこ。おはよう、孝一君、御手洗君、早瀬さん」
「佐藤先輩もおはようございます」
「それなら早く言えよ。っと、そういえば最近一年で行方不明になった奴がいるんだって?」
「はい、そうなんです。あたしのクラスの椎名って男子なんですけど、一週間前から来てないんです。家にもいないみたいですし、どうしたんでしょうね」
「そうなんだ。御手洗、何か知らないか?」
「いや。俺も少し気になって調べてみたけど分からなかった」
「お前が知らないとは珍しいな」
「そうですね。先輩に分からないことがあるなんて……」
「お前ら、俺のことをどう見ているんだ? 俺にだって分からないことはある」
「でも本当にどうしたんだろうね」
「といっても俺たちに出来ることはないけどな」
「そうね。それと気になるといえば、美由紀ちゃんの様子はどうなの? あれ以来、会ってないけど」
「気になるなら見舞いに来たらどうだ? 香織ならきっと喜ぶと思うぞ」
「美由紀ちゃんって?」
「あぁ。うちに入院している娘なんだが、ちょっとしたことで香織と知り合ったんだ」
「ちょっとって感じでもないけどね。あたし、美由紀ちゃんが病気ってこと知らなくて酷いことしちゃったんだ」
「気にするほどじゃないと思うが。逆にああいう扱いの方がいいのかもしれないし。御手洗どう思う?」
「俺に聞くな。それはお前の専門だろう」
「俺も本職じゃねぇって。でも香織ならいい影響を与えると思うぞ」
「そっか。なら今度お見舞い行こうかな」
「そうしてくれ」
「先輩は知ってるんですか?」
「まぁ、俺も野村先生には世話になっているから、病院で見掛けたことがある。むこうは知らないだろうが」
「そうなんですか。あ、あたしはこっちなのでもう行きますね。それでは先輩、また放課後に」
「あぁ」
「またね、早瀬さん」
「さて。それじゃあ、俺たちも教室に行くとするか」
「そうだね。今日一日頑張りましょう」

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