2009年1月20日火曜日

感想『密命』シリーズ

『密命シリーズ』(佐伯泰英)

このシリーズに興味を持ったのは2008年の春に放映されたドラマを見てからです。
その時代劇での、主人公と脇を固める俳優陣の対比が印象的です。

主な脇役を取り上げてみます。

・荒神屋喜八
 主人公が浪人後に働くことになる職場の親方。
 配役は大岡越前役で有名な加藤剛。

・芝鳶の辰吉
 め組の頭である棟梁。
 配役は水戸黄門の格さん役で有名な伊吹吾郎。

・日下左近
 敵役となる剣客。
 配役は遠山の金さんで有名な松形弘樹。

などなどです。


原作の小説を読んでみると、確かにこれは面白い。
そして、この配役は間違っていないと感じました。

例えば、主人公の金杉惣三郎は長屋暮らしをしている浪人です。
火事場を片付ける荒神屋での働いて暮らしています。

しかしそんな長屋暮らしでも、知り合いがそうそうたる人物ばかりです。
江戸有数の豪商、町奉行、その部下の同心・下っ引き、さらには大道場の師範などなどです。

そういう人物の中でも、主人公は飄々としていながらも、確固たる存在感があるのです。
ですから、そういう雰囲気を出すにもこのドラマでの配役は間違っていないと思います。
主人公が「昼行灯型のヒーロー」だということを巧く出ていると感じました。


そして、主人公である金杉惣三郎が魅力的です。
劇中でも初めての彼を知った人は、長屋暮らしの浪人がどうして先に挙げたような人たちと知り合いなのか不思議がります。
それに対して、彼自身も「よく分からない」と返します。

また惣三郎は、先に挙げた町奉行や旧藩からの「密命」によって暗躍しますが、それによって命を狙われることもあります。
その襲撃者に対して平然と「迷惑至極」と返事しています。

彼自身「分からない」答えるなど、平凡な生活を望んでいるのでしょう。
普段の雰囲気は至って平凡です。
しかし、刺客に襲われてこう伝えるなど、やはり非凡な人物なのだと思います。
その対比が魅力なのだと思います。


ワシは、時代小説を書こうとしたこともありませんけど、ここまで魅力的な主人公というのは憧れます。
やはり読者をワクワクさせるような登場人物があってこそ、その物語は生きてくるのでしょうね。

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