オレたちは、盗賊団に囲まれていた。
場所は、街道から外れた脇道である。旅をする場合、街道なら通行料が取られる一方、比較的安全に通れる。
しかし、冒険者を目指すオレにそんなマネできるわけがない。
そんな小さなプライドが、今の状況を招いたのかもしれない。
「シイナ、どうする?」
困ったオレは連れの少女、シイナに聞いた。
「好きなようにやったらいいよ?」
オレたちの様子を盗賊たちは余裕たっぷりに見ている。
「今後の相談かい?」
倒せればそれが一番だろうが、悔しいことに師匠いわくオレは剣には向いていないらしい。今の実力でこいつらを排除できない以上、何か手段を考えないといけない……。
ダメだ。そんな手段なんか思いつかない。
……仕方がない。
「とりあえず、金貨は全部出すから、ここを通してくれないか」
我ながらヘタレな手段だと思う。これじゃあ、通行料をケチって脇道に来た意味がないぞ。しかし、背に腹は変えられない。
「ほう、物分かりがいいな。で、いくらだ?」
どうやらこれで通してくれそうだ。 助かった。
「あぁ10枚ある」
「金貨10枚だと!? ふざけるな! そんなんで済むか!!」
ヤ、ヤバイ!? 全然足りなかったらしい。しかし、ない袖は振れないぞ!?
「そ、そうだ。ならこの少女、彼女でどうだ!?」
オレは、横にいたシイナを連中に突き出した。彼女なら見た目もいいし、価値はある筈!
オレの提案に盗賊たちも驚いたようだが、すぐにシイナを拘束し始める。その間も、彼女はされるがままである。
オレは空を見上げた。
ふぅ。とりあえずこれで危機は去っ……。
どぉぉぉん!
慌てて音の方を見ると、盗賊たちが一人残らず倒れている。そして、一人立つシイナの手には、いつの間にかハンマーが握られている。
シーナがスーッと顔を上げる。
ひぃぃぃい! メチャクチャ怒ってる!?
「確かにボクは、好きにしたらいいって言ったよ。でも普通、連れのこんなに可愛い娘を差し出す?」
一歩一歩近づいてくる足音が、死神の足音に聞こえる。っていうかシイナのハンマー、電気みたいのでビチビチいってますよ!
「いや、あの……。シイナならこんな奴らどうにでもなるから……」
「だからって、やって良いことと悪いことがあるよね。少し頭を冷やそうか」
ダ、ダメだ……。やられるイメージした浮かんでこない。
「は、話せば分かる……」
「問答無用!!」
オレは師匠であるシイナの一撃を受けて意識を失ったのだった。
2 件のコメント:
ややっ!? 連載になったのですね。師弟のドタバタ劇、これから見守らせていただきます^^
しかし、二人とも良い性格していますね(笑)
GEMさん、コメントありがとうございます。
今後の二人が、どうなるかは分かりませんけど、生暖かい目で見守ってやって下さい。
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